被爆77年目となる今年の原水爆禁止世界大会は、3年ぶりに広島の現地で開催され久々に広島の世界大会に参加してきました。
ロシアによるウクライナ侵攻が続き、核兵器禁止条約(TPNW)締約国会議が「ウィーン宣言」「ウィーン行動宣言」を採択し大きく成功し、核不拡散条約再検討会議と並行しての開催となりました。
国際会議の主催者報は、被爆者の平均年齢は84.53歳とはじめて84歳を上回り、被爆者数は118,935人と、初めて12万人を下回り、高齢化が進み「生きているうちに核兵器をなくしてほしい」との被爆者の訴えを受け止め、被爆の実相を大きく国内外に発信し、核兵器全面禁止・廃絶、核兵器禁止条約(TPNW)に署名・批准する日本政府の実現が強く求められている。
ロシアによるウクライナ侵略は国連憲章と国際人道法を踏みにじる、野蛮極まりない犯罪行為であり、3月に2度にわたり開催された国連総会緊急特別会合は、2日にロシア軍の即時撤退を求める決議(賛成141ヶ国)、24日に2日の総会決議の完全履行、国際人道法の尊重、人道危機打開を求める決議(賛成140ヶ国)を採択した。2021年に発効したTPNWは、核兵器使用と使用の威嚇を禁止している。
プーチン大統領らによる核兵器使用の威嚇は、核抑止論の危険性をまざまさと示すとともに、人類が核兵器使用の惨禍から免れる唯一の保証は、核兵器廃絶しかないことを浮き彫りした。
6月に開催されたTPNW第1回締約国会議は、80ヶ国を超える国・地域が参加し「核兵器のない世界」の実現を目指す「ウィーン宣言」と「ウィーン行動計画」を採択し「核兵器は、平和と安全を守るどころか、強制や威嚇、緊張の高まりにつながる政策の道具として使われている」と断罪し、「私たちは、最後の国が条約に参加し、最後の核弾頭が解体・破壊され、地球上から核兵器が完全に廃絶されるまで、休むことはないだろうと」と決意を表明した。
8月1日から26日までの日程で、核不拡散条約(NPT)の第10回再検討会議が国連本部で開催されている。第6条の核軍備縮小・撤廃義務と「核軍備撤廃につながる、自国の核軍備の完全廃絶を達成する明確な約束」など、これまでの合意事項の履行を核兵器国に迫る国際世論の構築の場に発展させる。
7歳、国民学校2年生の時に木造校舎で被爆した、日本原水爆被害者団体協議会事務局次長の児玉美智子さんは、「突然ものすごい光、あっという間に木造校舎の天井は落ち、窓ガラスが鋭利に割れ、飛び散った」が幸いガラスが刺さっただけの軽症だったと。
学校まで迎えに来た父の背中におぶさり帰宅途中、「この世の地獄を目にした」と、皮膚が焼けただれぶら下がっている人、真っ黒い炭のようになった赤ちゃんを抱いた、ひどいやけどを負ったお母さん、眼球が飛び出している人、飛び出した内臓を抱えた人・・・。
父や私の足にすがりつき、「水を水」と助けを求める人に何もできずに家へと急いだと。
かろうじて生き残った被爆者は、原因不明の病で次々亡くなった。従妹の女学生のお姉ちゃんは私の腕の中で息絶え、10歳のいとこのお兄ちゃんは軽症だったが9月に突然、目の前で血の塊をはいて亡くなった。無残な姿は脳裏に焼き付いたまま、原爆は人として死ぬことも、人間らしく生きることも許さない。77年たった今も「あの日」が消えることはない。
父も母もがんで亡くし、差別と偏見の中、結婚し子供を授かったが放射能の影響が出ないか悩み苦しみ、決断し産み育てた子は2010年11月に癌を発症し、2011年2月に逝ってしまった。明るく元気な子だった。辛く、悲しいお話。
地獄の苦しみを、世界のだれにも味併せてはならないと国の内外に原爆被害の実相を語り訴え続けておられる。
ロシアによるウクライナ侵攻の報道を目にするたびに、77年前のあの日がよみがえり、悲しく、胸が詰まり、涙があふれる。核兵器が地上にあること自体が非人道的。
核抑止による安全保障ではなく、相互信頼に基づく安全保障政策に転換し、核兵器廃絶を。被爆者は心から訴える。核戦争が起これば人類は滅亡する。滅亡から人類を救う唯一の道は核兵器の廃絶。
ウクライナの代表は、「ウクライナは核兵器を捨てたから攻撃された。核兵器を手放したのは間違いだった」という主張は違う。核兵器を保有すれば核戦争に巻き込まれる危険性が高くなる。
NATOの拡大とヨーロッパへの米国のミサイル防衛システム配備を脅威と感じたロシアは、ミサイル防衛を突破する極超音速ミサイルの開発で対抗し新たな軍拡競争が始まった。
2021年から2022年にかけてのロシアとNATO軍による核を含む軍事作戦と演習の脅威、ロシアの侵略を理由に核不拡散の約束を見直すというウクライナの脅し、冷戦終結30年間、東西間の世界的対立は、経済的なものから、米国とロシアの勢力圏を巡る軍事的な対立へとエスカレートしたと。
ロシアの政府高官は、国家の安全保障は人道的関心事よりも重要だとのべ、米国政府高官は、核兵器禁止は自由市場で米国企業が大きな利益を得るという事業を妨げると言っているのだ。核戦争で人類を自滅させることで利益を得られるような国家も同盟も企業もない。無責任な政治家や死の商人は、核脅迫を使い利益を上げる。
縮小する社会福祉の再生、気候危機対処の資金が切実に求められている。狂気ともいえる巨額の公的資金が人類滅亡のために投資されていることに抗議せねばならぬ。
戦争マシーンを止めよ。今すぐ行動を起こし、大声で真実を語り欺瞞的な敵のイメージに対してではなく、核軍国主義の政治・経済システムに対し責任を問い、平和的方法で戦争に抵抗し、全ての戦争をやめさせ平和構築を!
ロシアからは、ヒロシマ、ナガサキから77年経つ今、また同じ悲劇が繰り返されかもしれない。
ロシアの原子科学者は、58メガトンの核実験を1961年迄に行い、これは広島、長崎の原爆を含め、第二次世界大戦ですべての国が使用した爆発力の10倍にあたり、人類文明を何度も破壊できる。核兵器を使用する地政学的状況は激変した。ロシアの10のNGOが構成するバルト海平和運動は、フィンランドの大統領、議会、政府にアピールを送った。1975年に開催されたヘルシンキ会議の精神を受け継いで、欧州安全保障協力国際会議を2025年に開催するよう要請し、その会議の成果が2025年にまとめられるまでフィンランドはNATOに加盟すべきでないと提案したが、聞き入れられなかった。
ロシアに隣接する中立国のフィンランドとスウェーデンがNATOに加盟し、バルト海域全体がロシアに対立する地帯となった。
ジュネーブ条約やIAEA決議で禁止されているにも関わらず、ザポロジエ原発が占拠された。敷地内には使用済み核燃料は数十トンのプルトニュウム239を含んでいる。長崎級原爆を数千発も作れる。
ザポロジエ原発がロシア軍の管轄下、事実上のロシア軍の基地となって、誰も攻撃出来ないと、原子力の軍事利用と平和利用の技術には区別はなく危険だと断じ、「被爆者とともに、核兵器も原発もない平和で公正な世界を」と訴えられた。
ウクライナ侵攻の最初の数週間で、120万以上のロシア市民が戦争に反対する請願書に署名したが、状況は激変した。
■全てのロシア独立系メディアが閉鎖され■国営テレビは戦争のプロパガンダ■戦争批判を禁止する新法制定され、違反者は刑務所へ■欧州人権裁判所の判決は施行されず■SNSはブロック■20歳から60歳の男性は、学校教員の3倍の給料で「特別軍事作戦」に参加する契約を結ぶよう勧誘■他国のパートナーと協力している非政府組織の代表は市民権のはく奪
世界大会に参加している自身も今後どうなるかわからないと言われていた。
最後にロシアと欧米諸国の政治家は、政治的に対立する国は敵だと。敵を作ることで、国内での社会的統合ができると考えている。
しかし、日本、ウクライナ、ロシアや他国に住む私たちは敵同士?私たちは、皆、地球という惑星に住む隣人だ。
地球を守るため、手を取り合って行動しよう!
(更新日:2022年08月13日)