篠山市行政調査 原子力災害対策の取り組み 安定ヨウ素剤事前配布について

 
東日本大震災を契機に、篠山市原子力災害対策検討委員会が平成24年10月に設立され、検討が開始されました。委員会は、平成24年10月24日から平成28年11月末まで17回の委員会と7回の部会(事前対策部会―原子力災害対策マニュアル・緊急対策部会―安定ヨウ素剤の配布)が開催され、委員会では、兵庫県が行った高浜、大飯両原発の事故時の放射線拡散シュミレーションで、「篠山 被曝最大167ミリシーベルト」「国基準の3倍超」との神戸新聞平成25年4月25日付け報道を重視し、安定ヨウ素剤配布への取り組みとなりました。
 篠山市は福井県の力発電所から45~70キロに位置しており、兵庫県のシュミレーションによる被曝線量は、安定ヨウ素剤を服用して被曝を予防しなければならない多さとなります。
 こうした取り組みを通じ、平成27年6月17日には「原子力災害対策に向けての提言」をまとめ、市長に提出されています。この提言は、「憲法13条及び25条に規定された私たちの人格権を守る」精神に則って書かれています。

 篠山市の原子力防災の要点は3つです。
 ①とっとと逃げる
  原発事故で怖いのは放射能が飛んでくることです。しかもどんな風が吹くのか予想できません。とにかく原発から「とっ  とと逃げる」ことが大事です。
 ②心のバリアを取る
  大丈夫だという思い込みや、集団の行動に合わせ、周りが正しいとの思いこみ、事故が起きてもパニックになる事を恐   れ、危険をあおるとパニックになるとの思い込み等、心のバリアを取る事が大事です。
 ③被害を少しでも減らす
  放射能による被ばく線量が多いほど危険です。被ばくはできるだけ少なくする努力が必要です。

 こうした提言の具体化として、安定ヨウ素剤の事前配布に向けた取り組みが行われています。市民が何より、正しく理解し適切に服用できることが肝要です。福島原発事故では、原発周辺では安定ヨウ素剤は配られていましたが、判断できなかったためほとんど服用されなかったというのが現状でした。安定ヨウ素剤の服用の必要性や、服用にあたっての諸注意、副作用に関する知識や、リスクを減らすための事前調査や事前教育が重要です。篠山市では、全市職員450人への研修を実施しています。全職員が分担して各自治会でDVDによる説明会が行われ、206自治会で市民の10%にあたる4,300人が参加しています。また、すべての小中学校PTA会議で出前講座も開催され、23回650人が参加しています。
 この研修とは別に、安定ヨウ素剤事前配布従事職員への研修も実施され、のべ260人の職員が参加しています。
 こうした取り組みが、職員や市民の原子力災害に対する意識を大きく変えるものとなったのではないでしょうか。最も熱心に取り組まれたのが消防団だったそうです。また、こどもを持つ若い世代の関心も高く、2年間の事前配布実績は3歳以上13歳未満の受領率は73.6%にもぼり、親世代の30代、40代の受領率も高くなっています。

これらを踏まえて、最後に要点となるべき提言されています。提言1 ~4は市に対してのものであり、5は市民のみなさんに向けたものです。篠山市原子力災害対策検討委員会の提言そのものを載せておきます。

<提言1> 原子力災害対策検討委員会における討議を通じ、原子力規制委員会 が提示している現在の避難計画の基本案(原子力災害対策指針)はあまりに実情に あわないことが明らかになりました。また国は周辺自治体が、この避難計画の策定 すらできていない段階で、原発の再稼働に進みつつあります。 市は住民の安全を守る立場から、また篠山市民のみならず、より原発に近い人々 の命を守る立場から、福島原発事故と同規模ないしそれを上回る事故に際して、国 の責任で、周辺住民が確実に避難できるもっと現実的な対策をたてること、放射線 防護の徹底化を図ることを、国と原子力事業者に対して強く求めてください。

<提言2> 市は篠山市独自の判断として、福井県の原発群で深刻な事故の発生 が伝えられた段階で原子力災害対策本部を設置し、原災法第 10 条通報の時点で 自主避難および屋内退避の勧告などを行う体制を整えてください。 その場合、本提言書で示した自主避難と屋内退避の場合分けの想定に基づき、い かに両者の勧告を市民が混同しないように発するのかの詳細を含めて検討してい ただき、結果を当委員会に還元・ご報告ください。

<提言3> 市は原子力災害への備えにおけるパーソナルシミュレーションをはじめ とした各種のシミュレーションの重要性を市民に伝え、それらを市民が行う手助けを 行ってください。そのために必要な施策を講じてください。 また市民が「とっとと逃げる」際に、市がどのように避難を指導ないしサポートする 36 のかの詳細計画の策定を進め、結果を当委員会に還元・ご報告ください。

<提言4> 市は被曝防護のための安定ヨウ素剤の事前配布をすみやかに行ってく ださい。知識普及のための学習会を含む、配布計画の詳細を策定し、市民に公表し てください。

<提言5> 市民のみなさんは、日ごろから原子力災害に限らず、災害のあり方を学 び、いざというときに「正常性バイアス」にかかることなく、迅速な避難ができるように シミュレーションを繰り返してください。市が災害対策の精一杯の努力を行うことを前 提としつつ、市民一人一人の日ごろの備えが災害に強い町を作ることをご理解いた だき、原子力災害を含んだ災害全般に対する備えを強化してください。
 
 

(更新日:2017年02月07日)