消費税増税は、景気を冷やし暮らしを脅かすだけではなく、財政再建にも逆行します。消費税導入前の1988年の税収は50.8兆円あったのが2010年では37.4兆円にまで落ち込んでしまいました。消費税導入で9.6兆円の消費税収があったのに13兆円の落ち込みました。法人税減税と金持ち優遇の累進課税の緩和で、法人税は18,4兆円から6兆円に3分の1に大幅減少し所得税も18兆円から12.7兆円に落ち込んでしまいました。消費税の正体は、導入時点から社会保障財源ではなく、金持ち減税に消えてしまっています。
一昨年の8%への増税は、日本経済、京都経済を深刻な増税不況に追い込んでいます。昨年9~12月四半期のGDPの速報値はマイナス0.4% 年率換算で1.4%の後退を引き起こししまいました。この上来年4月から、軽減税率を実施しても、一昨年の増税と合わせ一世帯当たり184,000円、国民一人当たり81,000円もの増税になります。経済破綻を引き起こしかねません。きっぱりと消費税増税は中止するべきです。
軽減税率の導入も大問題です。「酒類と外食を除く飲食料品」と「週2回以上発行される宅配新聞」の税率を低所得者対策として8%に据え置くとしていますが、とんでもありません。一部の取引を8%に据え置いて何が軽減なんでしょう。富裕層が買う高額食材も軽減です。低所得対策が聞いてあきれます。
外食とそうでないものをどう分けるか、さまざまな場面が想定され現場の混乱は必至。そもそも「外食」が贅沢だと10%にする根拠はありません。高価な宅配サービスなども8%なのか。店内での飲食と持ち帰りを選べる店などの厳格な経理処理が求められることになり、混乱は避けられないでしょう。
複数税率に対応するために「請求書の交付・保存」と「税額計算」等新たな負担は零細業者にとっては深刻です。2017年4月からは「区分記載請求書等保存方式(簡易式)」となり、2021年4月からは商品の売り手が買い手にインボイスを発行するよう義務付けられます。税額計算は売り上げや仕入れを税率ごとに区分し、税込み価格を税率で割り戻して計算する現行方式と、消費税額を積み上げて計算する方式の選択となります。課税売上5000万円までの業者は、平成17年4月からインボイス導入までの4年間は、特例措置で、連続10日間の売り上げをもとに軽減税率対象売り上げ割合を計算し、その割合を年間売り上げにかけて計算する「みなし課税」が選択できるそうですが、実務が大変になるということは、課税庁の課税コストも膨大に膨れ上がるということで実に不合理な制度です。赤字でも納税が迫られ、滞納が最も多いのが消費税。文字どうり血管税制。
そもそも、インボイス方式は大問題点。インボイスとは適格請求書発行事業者の氏名や名称、登録番号、取引の内容、適用税率、消費税額が記載された請求書、納品書、領収書などの書類のことです。インボイスが発行できるのは、税務署から登録を受けた事業者で、免税業者は登録できません。インボイスの保存が仕入れ税額控除の要件となっているため、免税業者からの仕入れは仕入れ税額控除ができなくなります。約800万事業者のうち500万事業者とされる免税事業者がとりひきから排除される可能性あります。地域経済を支える中小業者の営業破壊を引き起こす軽減税率の導入の上の10%への増税はこの点からも大問題です。
朝日新聞15年12月の世論調査では、消費税増税に賛成するは35%。一方反対は56%に上っています。カナダでは91年に7%で導入しましたが、06年には6%に、08年には5%に引き下げています。増税を中止し5%へ引き下げを求め、さらに廃止を迫りましょう。
財政再建、社会保障の財源は、応能負担の原則に従い、大企業、高額所得者に累進課税の強化で応分の負担を求める税制改革を行い確保すべきです。
(更新日:2016年03月21日)