9月市会決算委員会 市長総括質疑
10月20日 山田こうじ
●京都経済の再生・小売商店・伝統産業支援
○コロナ禍に加えて、異次元の金融緩和、アベノミクスの結果、異常な円安が進行。1ドル=149円台と32年ぶりの安値を記録。円安ドル高水準が、物価の上昇に拍車をかけ、9月の国内企業物価指数(速報値,2020年平均=100)は前年同月比9.7%上昇し、過去最高の116.3となった。輸入物価を円ベースで見た指数は前年同期比48.0%上昇。政府の「物価・賃金・生活総合対策本部」に内閣府が提出した資料は、円安影響が7月時点で物価上昇要因の5割程度を占めていると指摘。この資料は、大企業が円安の為替差益で利益を確保し、経常利益が過去最高となる一方、中小企業は原材料高で減益になっていると説明している。内需を中心とする大多数の中小企業にとって円安は利益を圧迫する要因。民間信用調査会社、帝国データバンクが集計している今年8月の「物価高倒産」は昨年同月比で2.6倍、今年初めから8月末までの累計180件に上り、すでに年間最多を更新している。アベノミクスによる異次元の金融緩和は見直すべきだと質したところ、「金融政策については、影響が大きく、国・日銀で適切に判断されるべきこと。」との答弁だった。市長も同じ認識か。
(答弁→岡田副市長)金融政策は中央銀行(日銀)が行う金融面からの政策で、日本全体を見渡して決めていくべきもの、日銀の金融政策決定会合によって判断される。金融緩和、為替介入、金利操作、輸出の際価格競争力、輸入コスト、住宅ローン金利への影響など、経済・国際情勢まで多岐にわたる検討が必要になる。国・日銀において考慮すべきこと、制度的にも国・日銀において総合的に、慎重かつ適性に判断されるもの。市独自の調査「中小企業経営動向実態調査」で経営上の不安要素は、原材料価格上昇が多く、物価高について行政としてどう対応するか、十分考え努力する必要がある。
○岸田首相がいう「円安」を活かした「稼ぐ力」の加速は大企業だけの話。国の子会社化された日銀では、適切な判断ができないのは明瞭。本来金融の番人として、政府から独立しているはず。アベノミクスを推し進めた結果、格差と貧困が拡大した。金融緩和の見直しを国に強く求めるべき。
○中小企業憲章では経済や暮らしを支え、牽引する。創意工夫を凝らし、技術を磨き、雇用の大部分を支え、暮らしに潤いを与え、「社会の主役として地域社会と住民生活に貢献」する存在と位置付けている。局別質疑でも「中小企業が99%を占めている。雇用では70%を支えておられる。経済の担い手、地域を支える京都の宝だ。しっかりと事業の継続、発展ができるようコロナ禍、ポストコロナも見据え支援していく。」と答弁されたが、具体的支援策は示されなかった。具体的な直接支援が必要。企業立地促進制度補助金では資本金1億円以上の大企業17社に1億92百万円、制度創設から令和3年までの累積で上位10社の大企業に、30億円もの税金が補助されている。体力のある大企業より、小規模事業者こそ支援がいる。そもそも、中小企業支援の予算規模が小さい。決算実績報告書の商工対策決算額は2,285億円。うち、融資預託金は2,211億円で、実質商工対策費は73億55百万円にすぎない。国の交付金のみではなく、京都市として今こそ直接支援を、ただちに補正予算を組んで支援が必要だが、いかがか。
(答弁→岡田)金融政策は日銀・国で実施すべきもの。京都市は行政として、地域企業、中小企業をどう支えていくか、物価高にどう対応するか真剣に考えていく。商工会議所の経営支援17名増員を本市独自で行い体制強化した。事業継続や下支え、ウィズコロナ、ポストコロナを見据えて、経営者の高齢化や後継者不足、IT導入や販路拡大など、次の時代に対応できるよう相談にのり、コロナ禍のもとでR2.3年度、各種補助金を創設してきた。現在受け付け中の中小企業総合支援補助金では、利息や補償料等の資金調達コストも補助対象としている。国の財源を使って全力で取り組んでいる。
○国の交付金の範囲内の支援しかしていない。
○西京極の住宅街の中で1軒だけある、食料品店、御主人のお話を聞いた。商売を始めて53年。14坪の店舗と14坪の倉庫で、惣菜とフライ、刺身が自慢で、「ええもん売らんとあかん。」と頑張っておられる。日商は、かつては10~12万円あったが、2015年に、売り場面積40,000平米、1,700台の駐車場のある西小路五条の大型スーパーの向かいに新たに、売り場面積4653平米の大型スーパーがオープンし、それ以前から近隣には中規模スーパーやドラッグストアなどが次々出店し、売り上げは半減し、更にコロナで最近は2~3万円。売り上げの半分以上は高齢のお客さんへの配達で、地域になくてはならない店。コロナ融資3,000千円を借り、借り入れは10,000千円にふくれあがった。これまで給付金や保険などで凌いできたが、いよいよ返済の目途が立たない。返済の条件変更、利子・保証料の支援は勿論、返済が滞れば、貸し手である地域金融機関にも大きな打撃となる。金融機関と中小企業両方の負担軽減し、小規模事業者にも活用できる制度が必要。返済免除、借入金を出資とみなす資本制劣後ローンの対象拡大等含め、新たな支援が必要。国は全く無策で、国に対して中小企業支援をしっかり行うよう求めていただきたい。
○元々、個人の小売商店が苦しくなった最大の要因は大型店の出店だ。量販店の出店調整が必要だ。京都市では、都市づくりの目標と整合した望ましい商業集積を図るため、京都市内を7つのゾーンに分け、商業集積の方向及び大型店の誘導・規制の考え方としての望ましい店舗面積の上限の目安を示す「商業集積ガイドプラン」を運用している。売り場面積の上限を指定するだけ。商業集積ゾーンや、高度集積地区では上限規制すらない。周辺地域の商業施設の状況など、商業調整機能がない。過去5年間の大規模・中規模小売店舗が47店も出店して7店が撤退している。秩序ある望ましい商業集積と言えるのか。
(答弁→岡田)中小企業支援等は、国が全国的な視野で直接給付など相当な財源が必要なもの、自治体の財政力に左右されないよう、国がやるべきもので、国に対して繰り返し府・市・経済界で要望してきた。多くの事業が実施されてきた。00融資の無利子期間終わり返済ピークが来るが、何度も国に対して返済時期の取り組みについて要望している。金融機関・保証協会に対しても、返済猶予や期間の延長など、既往債務の条件変更について、実情に応じて柔軟な対応を要請している。本市でも限りある財源で、工夫しながら対応している。利子補給や信用保証料の補助は一部本市の制度もあるが、根幹は自治体の財政力に左右されることの無いよう、国で対応すべきもの。金融機関では市・国からの要請をうけ、貸し渋り貸しはがしを行わない、既存債務の条件変更に最大限柔軟に対応していただいている。商業集積ガイドプラン、H12年に旧大店法が廃止され商業調整は無くなった。生活環境保持の観点で、大規模小売店舗と地域社会の融合を図る。京都市商業集積ガイドプランを策定し、商業集積の現状・地域特性を考慮して、7つのゾーンに分類している。小売店を新たに設置する際の店舗面積の上限目安を示している。無秩序な商業開発の抑制を基本としている。ガイドプラン策定後65件大型店新規出店があり、事業者と事前協議を行い、全てガイドラインを遵守している。本市の小売店全体に占める中小小売店の割合は、政令市で面積2位、総販売額4位で、ガイドプランが有効に機能して中小小売店が頑張っている。ガイドプランは社会・経済状況、商業立地関係の変化、用途地域の変更に応じて、学識経験者・消費者等が参画する本市商業集積検討委員会に諮って、必要な見直しを行っている。
○京都市独自の支援がない。国の持続化給付金も月次支援金も終わり、現在は何もない。00融資返済が始まろうとしており、返済できず廃業せざるをえない、となりかねない。
○伝統産業支援について、京友禅の生産量は、京友禅協同組合連合会の調査によると、1971年の16,524千反をピークに下がり続け、2021年は264千反と、ピーク時のわずか1.6%にまで落ち込んでいる。風前の灯。この10年間だけでも半減し、新型コロナ禍の下、令和2年は前年度比4分の3と大きな落ち込みとなった。染色加工技術別に前年度比較を見ると、機械捺染が10,255反、型染が3,701反、手描き染めが3,080反それぞれ減少、一方インクジェットが4,665反増加した。七五三や成人式の記念写真を撮影するスタジオが大量に着物の発注をしている。単価が安く、ほぼインクジェットの着物だと聞いた。着物を作成するには本来、多くの工程を通じて作られている。染めの段階だけでも、下絵や糊置き彩色、引染、蒸し等々の工程がある。インクジェットで染めるとこうした工程が必要なくなる。インクジェット技術が発達し着物も染めることが出来るようになり、従来、着物に手が届かなかった方が着物を手にすることが出来るようになった。着物は本来数多くの工程を熟練の技術を持った職人さんが携わる工芸品、伝統産業品が京友禅だと思う。インクジェットのプリンター投資分を回収するには単価を引き下げても、大量に受注しなければ事業として成り立たない。こうしたことが職人さんの工賃に大きな影響を及ぼしている。手作りの工芸品として適正な単価、地位の保障が必要だ。販路拡大も必要だが、職人さんへの直接支援がいる。板場友禅の職人さんにお話を聞いた。かつてはひと柄20反から40反染めていたが、ひと柄一桁の代の注文しかない。単価は多少上がったとしても効率が悪くなっている。月に20万円にもならない。こんな状態だから若い人が入ってこない。後継者問題は深刻だ。京都市伝統産業技術後継者育成制度の支給額は40万円、2箇年分轄支給。令和2年の実績は、わずか21件3,672千円。令和3年度は24件で3,920千円。これでは支援しているとは言えない。ある板場友禅工場の社長さんは、「イベントや特定の事業者の作品に何百万円もかけて支援するより、職人一人一人に毎月1万円でもええから配ってほしい」と切実に訴えておられた。これが現場の正直な気持ちだ。そのうえ、異次元の金融緩和による異常な円安が直撃し、白生地が高騰している。国産生糸は1割もなく、9割以上は輸入で大半は中国、5~6年前は1キロ5,000円だったものが今は10,000円ほどで、倍になっている。生糸を何本か合わせて撚りをかける。工賃は1キロ1,500円。丹後の織物業界もさらに深刻で、生産は大幅減となっている。着物文化を守るため、国に伝統産業をしっかり守るよう求めていただくことを求める。
(更新日:2022年10月22日)