決算特別委員会第3分科会局別質疑
2022/10/11
●伝統産業への支援の強化を
◯京友禅の生産量は、京友禅協同組合連合会の調査によると、昭和46年(1971年)の16,524,684反をピークに下がり続け、令和3年は264,105反と、ピーク時のわずか1.6%足らずまで落ち込んでいる。風前の灯といえる状況。10年前の平成23年を100とすると、令和3年度は55.3%と半減している。新型コロナ禍の下、令和2年は前年度比4分の3と大きな落ち込みとなった。
染色加工技術別に前年度比較を見ると、機械捺染が10,255反、型染が3,701反、手描き染めが3,080反それぞれ減少、一方インクジェットが4,665反増加した。伝統産業の技術が失われかねない深刻な事態だ。
(答弁→山口クリエイティブ産業推進室長)需要の低迷、担い手不足など大変厳しい。インクジェットは技法の一つと評価。着物の普及に力を入れている。着物を着る機会の創出をはじめ、和装教室業界が取り組む事業への支援等をおこなっている。技術の振興も大変重要、後継者の育成も大事だ。
◯七五三や成人式の記念写真を撮影するスタジオが大量の着物の発注をしている。単価が安く、ほぼインクジェットの着物だと聞いた。着物を作成するには本来、多くの工程を通じて作られている。染めの段階だけでも、下絵や糊置き彩色、引染、蒸し等々の工程がある。インクジェットで染めるとこうした工程が必要なくなる。インクジェットという技術が発達し着物も染めることが出来るようになった。従来、着物に手が届かなかった方が着物を手にすることが出来るようになったことは、これは技術の進歩だが、数多くの工程を熟練の技術を持った職人さんが携わる工芸品、伝統産業品が京友禅だと思う。インクジェットのプリンターは高価なものであり投資分を回収するには単価を引き下げても、大量に受注しなければ事業として成り立たない。こうしたことが職人さんの工賃維大きな影響を及ぼしている。手作りの工芸品として適正な単価、地位の保障が必要だ。
(答弁→山口)販路の拡大に力を入れている。たとえば、伝統産業とアニメとのタイアップ。コロナ禍東京インタナショナルギフトショップへの出店、アマゾンへの出店など行っている。
○販路拡大も大切だが職人さんへの直接支援が大事だ。板場友禅の職人さんにお話を聞いた。かつてはひと柄20反から40反染めていたが、ひと柄一桁の注文しかない。単価は多少上がったとしても効率が悪くなっている。四つ身の着物を染めている方は、以前はひと柄20反30反の注文が定期的にあったが、最近は8反しかつかない。それも、納入して在庫がなくなって次の注文が入る。手待ちになって休業状態だとのこと。高齢になって、ぼちぼち仕事をして体にとっては丁度いいけど生活が成り立たない。こんな状態だから若い人が入ってこない。後継者問題は深刻だ。ある板場友禅工場の社長さんは、「イベントや特定の事業者の作品にお金をかけて支援するより、職人一人一人に毎月1万円でもええから配ってほしい」と切実に訴えておられた。これが現場の正直な気持ちだ。寄り添う支援を。
(答弁→山口)これまでから伝統産業従事者支援事業、伝統産業促進事業とそれぞれ従事者個人に対して支援を行ってきた。職員が現場の声を聞いており、かゆいところに手が届くように、職人だけでなく、卸、小売りの声を聞いている。
◯直接支援が届いていない。加えて、異次元の金融緩和による異常な円安が直撃している。白生地が高騰している。純国産の正絹の白生地はほゞない。輸入生糸で織っている。生糸を扱っている撚糸屋さんでお話を伺った。国産御生糸は10%もない。90%は輸入で大半は中国、一部ブラジルだそうだ。中国の生糸の生産は大幅に減らしており、日本への輸入量も減り値段も上がっている。5~6年前は1キロ5,000円だったものが今は10,000円ほどで、倍になっているという。仕入れた生糸は一本一本はとても細く、何本か合わせて撚りをかけて糸の太さや強度を調整し1本の糸にする。帯に使う糸を加工している撚糸屋さんに聞くと15本の生糸をまず下撚りし、2本合わせて上撚りし糸にする。工賃は1キロ1,500円だそうだ。この糸を織り白生地にする丹後の織物業界もさらに深刻で、令和2年の生産は前年比60%減となっていた。原価が上がり、織機を動かし織れば動力代も掛かり、手間賃が出ないので織れないというより織らない。販路開拓も大事だが、着物そのものが作れなくなりかねない現状がある。京都が京都で無くなりかねない。京都の伝統産業を守るためにも抜本的な対策がいる。国に対しても伝統産業支援(わずかなもの)を強化し、組合を通じた支援だけではなく作り手への直接支援を抜本的に求める。
(更新日:2022年10月16日)