原水爆禁止2022年世界大会報告パートⅡ

■8月5日 国際会議セッションⅡの途中です。併せて、市政報告№285号です。NO.285
 
○ルド・デ・ブラバンデル 平和ベルギー
  地球を救うために環境問題に取り組まなければならんないという合意は広がっている。もう 
 一つの脅威、核兵器の脅威は十分な政治的意思と常識があれば、容易になくすことができる。
  気候危機と同様核兵器廃絶を世界政治の優先事項に!
  私たちの運命はほんの一握りの支配者の気まぐれや間違い、誤算、感情に大きく作用される。  
 プーチンが繰り返す核の脅しが如実に物語っている。トランプも「北朝鮮を壊滅させる」と核 
 攻撃で脅した。この威嚇は「核抑止」論の弱点を露呈させた。核抑止は「相互確定破壊」に基づ
 き、抑止力は過去も、現在も核軍備維持や更新を支える論理的根拠だ。
 産軍複合体は抑止力を口実に、数カ月前には想像もできなかったレベルにヨーロッパを軍事化
 し、NATOの軍事費はロシアの17倍に膨れ上がり、間もなく25倍になる。安全や防衛のため 
 ではなく、NATOが「体制的ライバル」と呼んでいる相手と覇権を争う戦闘を準備し、拡大する 
 ことを目的としている。
  イギリスは核弾頭を増やし、フランスは空対地核対応ミサイルの実験を実施し、アメリカも、
 レイクンヒースにあるイギリス空軍基地に新型B61-12核爆弾を配備。ポーランドも国内に核
 配備の意思を明らかにした。ロシアの核兵器が新たにバルト海地域に配備される恐れ。
  今年の春、ベラルーシは「非核兵器地帯」を取り下げ、ロシアの新型核兵器を領土内に受け入
 れると脅した。アメリカがNATO5ヵ国ーベルギー・オランダ・ドイツ・イタリア・トルコと結
 んだ核共有の取り決めに対抗したもの。
  新型B61-12核爆弾配備は、国会あるいは公開の場での議論も承認もなく秘密裏に行われてい
 る。なぜなら、NATOの核共有国は最初の標的となるから。これらの国々は、毎年秋に核兵器使
 用の演習を行っている。

  しかし、どんな危機にもチャンスはある。いくつかの世論調査は、ヨーロッパへの核兵器配備
 に反対していることを示している。大規模な反核運動に挑戦する。2021年1月発行の核兵器禁
 止条約(TPNW)が支えになる。NPTは核拡散を阻止し、核兵器国には核軍縮の義務を課し、
 TPNWはそれを補完する。
  平和運動の圧力を受け、ノルウェー、ドイツ、ベルギー、オランダがNATOとアメリカの反対
 を押し切り、6月ウィーンで開かれたTPNW第一回締約国会議に参加した。

  核戦争の脅威をなくさなければならない。ノーベル平和賞を受賞したオスカー・アリアス元コ
 スタリカ大統領の提案したように、「NATOはヨーロッパの核共有国に配備された核兵器の撤去
 と引き換えに、プーチン大統領をウクライナの戦争を終らせる交渉のテーブルにつかせること」。

 ヨーロッパはできるだけ早く非核兵器地帯となり次の世界の非核化に向かう一歩を印すべき!

○日本原水協事務局長 安井正和
  国連グテーレス事務総長は「広島と長崎の恐ろしい教訓は今日、記憶から消え去りつつある。
 以前は考えられなかった核戦争の可能性が、現実にあるレベルに戻っている。核兵器が私たちを
 絶滅する前に、核兵器を廃絶しよう」と核兵器禁止条約締約国会議にメッセージを送った。
 
  核兵器禁止条約(TPNW)第一回締約国会議「ウィーン宣言」は、「核兵器が平和と安全を守る
 どころか、強制、威嚇、緊張激化につながる政策の道具として使われ、核抑止力論の幻想を浮き
 彫りにした。」と厳しく批判。核抑止力の虚構を打ち破ろう!

  核大国は、核兵器禁止条約はNPT矛盾すると非難してきたが、ウィーンの締約国会議で多くの
 国はNPTの重要性を強調し、禁止条約は核軍縮の交渉を義務づけたNPT第6条を実行するもので
 あり、補完しあうものだと強調された。第10回NPT再検討会議へ、被爆地から、すべての国、
 とりわけ核保有国に対し「核兵器のない世界」を実現する多国間の取り組みとして、核兵器禁止 
 条約の「枠組み」を支援し、自国の調印、批准を強く求めよう!

  ドイツ、オランダ、ベルギー、ノルウェーのNATO諸国、オーストラリアなどオブザーバー
 参加している中、禁止条約をボイコットした岸田自公政権は、被爆国政府としての責任を放棄し
 ている。それどころか、その後に開かれたNATO首脳会議に出席し、「核抑止力」「核の傘」
 依存を深めた。
  核抑止力論にしがみつき、核兵器禁止条約に背を向ける岸田政権にノーを!
  世論調査では7割を超える日本国民が核兵器禁止条約への参加を求め、全自治体の約4割に当
 たる640市町村が意見書を提出。世界大会には、立憲民主党、日本共産党、沖縄の風無所属の衆
 参国会議員17名が大会にメッセージ動画で参加。
  前進のカギは世論と運動、共同にある!

○イ・ジュンキュ 韓国
  アメリカ主導の自由義国際秩序がNATOの拡大となり、安全保障上の脅威を口実にロシアのウ
 クライナ侵攻を招き、アメリカを頂点とする自由主義国際秩序が揺れている。
  世界史を一世紀逆戻りりさせたロシアのウクライナ侵攻。米、ロ、英、仏、中の核保有国が
 NPT第6条の核軍縮義務を果たさず、核軍備競争を助長し核不拡散体制の矛盾が北朝鮮、イラ
 ンへの核拡散を招いた。
 
  核兵器禁止条約第一回締約国会議は、市民社会と国々が、世界の緊急課題に対し時期に叶った
 連帯戦線の構築ができることを示した。核兵器禁止条約は「核武装国から、核軍縮の独占権を奪
 うもの」だ。
  
  東アジアは米中対立の最前線であり、ロシアのウクライナ侵攻をきっかけに、膨張主義により
 戦争もエスカレーションが懸念される。韓国大統領と日本の首相が今年6月のNATOサミットに参加。
 「Global NATO」といえるアジア太平洋へのNATOの拡張し「冷戦後の最後の分断線」朝鮮半島の
 分断線が東アジア全体を横切ろうとしている。

 2019年2月の米朝首脳会談と動燃10月の米朝実務者協議の決裂以来、朝鮮半島の非核化が閉
 ざされ、米中対立、ロシアのウクライナ侵攻が北朝鮮にとって好都合になっている事実。
  北朝鮮の「核ドクトリン」の好戦的な変化がある。

  バイデン政権は北朝鮮政策を打ち出し、現状維持を試みながら、日本や韓国を、中国とロシア  
 に対する他国的枠組みに巻き込むことを優先し、オバマ政権の失敗、第二の「戦略的忍耐」にな
 りつつある。

  韓国のユン・ソクヨル政権の対応は「核には核で対抗する」原則を明確に、2018年より縮小
 してきた米韓合同演習の全面再開、日米韓軍事連携強化し東アジアの緊張を高め深刻。

  朝鮮半島の軍事的緊張を防ぎ、対話外交を作り出すためには、北朝鮮の核実験やICBM発射、
 韓米合同軍医演習、アメリカの戦略兵器の前進配備、大規模な多国間共同軍事演習など含めすべ
 ての軍事的挑発の中止が緊急課題。
  
  世界の秩序は、アメリカ一局秩序から多極秩序へ転換している。反核平和運動と世界の市民社
 会に、私たちが立脚すべき平和、反核、人権、環境、平等などの普遍的価値を再確認し、歴史的
 成果や人類の座標に反する勢力の動きに対し断固として立ち向かう決意を求めている。

(更新日:2022年08月15日)