原水爆禁止世界大会報告

         核兵器のない平和で公正な世界のために 原水爆禁止世界大会に参加して
                                       
 8月4日から、広島で開催された「2016年原水爆禁止世界大会」は、直前の参議院選挙での野党共闘・市民の共同の広がりの成果をうけ、さらに発展させようとの決意みなぎる場となりました。
 被爆者を先頭に、核兵器の非人道性を訴え続けてきた日本の原水爆禁止運動が、国連と国際社会を大きく動かしています。開会総会で、元国連軍縮上級代表のセルジオ・ドゥアルテ氏は「7万発の核兵器が1万5千発に減少したが、ほんの数パーセントが使用されただけで人類の生存は脅かされる。核戦争に勝者はない」と核抑止の愚かさを告発され「被爆者の粘り強い努力に敬意」を表明されました。日本、韓国の被爆者の代表が「被爆者が呼びかける、核兵器廃絶の署名」への思いを語られました。
 こうした、長年の粘り強い運動が国際社会を大きく動かしていることが確信となる開会総会でした。核兵器のない世界を実現する為の「具体的で効果的な法的措置」を議論する国連の作業部会は、核兵器禁止条約交渉の会議開催を提案するなど画期的な成果となって実を結んでいます。
 「抑止力」を口実に、核保有や軍事力拡大には一片の道理のないことは明らかです。
 安倍総理は「対話と圧力」という言葉をよく使いますが、軍事的圧力のもと、相手を屈服させるやり方は「対話」とは言えません。軍事的緊張を高める「戦争への道」に他なりません。
 分科会3「核と基地のない日本、沖縄との連帯を」では、アメリカ、グアム、フィリピン、沖縄の参加者が、それぞれの基地被害、軍事優先の社会が人権も先住民の財産も文化も破壊している現状が生々しく報告されました。1949年のグアム協定で「日本からの開放」と歓迎していたが、一方的にアメリカの軍事文化が押し付けられ「軍隊は素晴らしい仕事をしている」という教育と基地経済に縛られ、アメリカの軍事化批判がむつかしくなっている。そうしたもと国土の三分の一が基地にされ、先祖を祭る大切な場所まで奪われようとしている等の報告に「沖縄の基地はアメリカへ持って帰れではなく、これからは地球のどこにも基地はいらない」と訴えなければとの発言も。
 米軍基地を撤去したフィリッピンからは、「中国との安全保障の唯一の道は米軍基地を持つこと」と20年たって基地が戻ってきて、フィリピンの軍事費が2倍に拡大している現状が報告され、「運動に近道はない。沖縄のような団結した戦いを」との話は印象的でした。
 アメリカのジョセフ・ガーソン氏は、アメリカの外交政策とアジア太平洋政策について詳しく報告されましたが「アメリカの平和運動は中東戦争で消耗している。息を吹き込まねば」とアメリカの平和運動も困難に直面しているような報告でした。
 武力で平和は守れないどころか、戦争への備えは民主主義と人権が破壊されている現状や、マスコミと教育の影響も深刻です。
 基地被害に苦しむ、沖縄、グアム、フィリピンの代表の発言は、人権も民主主義も暮らしも破壊する軍隊の本質を明らかにしています。
 ベトナム戦争の枯葉剤被害者や、マーシャル諸島の核実験場被害、チェルノブイリや福島などの原発事故被害も同様な深刻な核被害者で、世界大会は各被害者の連帯の場でもあります。
 膨大な軍事予算が暮らしを破壊し、格差と貧困を拡大しています。「軍事産業に出資している金融機関をボイコットしよう」といった提起もありました。
 オスプレイをはじめ、日本の防衛と無関係な装備に膨大な税金が注ぎ込まれている軍事予算の実体や、米軍への「おもいやり予算」の真実を伝えることも大切です。
 人口一千七百万人のオランダでは「市民イニシアティブ」で四万筆の署名で要求すれば国会での審議が義務付けられているそうです。
 一千二百万筆の「戦争法廃止」署名を無視し、「基地はいらない」と明確な選挙での審判を無視し暴走する政治を止めなければなりません。

(更新日:2016年08月18日)