貧困の再生産を終わらせるために

NPO法人ほっとプラス代表理事の藤田孝典さんの講演「貧困の再生産を終わらせるために」(京都第一法律事務所主催 憲法を活かす講演会)に参加してきた。
日本の貧困率はOECD加盟国中(34ヵ国)6番目に高い15.7%。約3千万人近い人々が生活保護基準以下で生活を強いられている。社会保障が形骸化し、暮らしが成り立たないという問題を「個人的な事」としてきてしまった福祉の罪は大きい。
相対的貧困率を決める可処分所得の中央値は、この20年間に52万円も下がっている。月額4万3千円も下落し、中央値が下がっているのに貧困率は上昇する異常さ。
単身世帯の貧困が増加している。一人暮らしは日本社会では想定外だったが、日本型家族システムが崩壊と社会保障の遅れが、単身世帯の貧困の増加となっている。
日本で深刻なのは、母子家庭などの「ひとり親世帯」の子ども。相対的貧困率は50.8%。母子家庭に限ると、82.7%が「大変苦しい」「やや苦しい」と回答。
日本のひとり親世帯の就労率は、海外と比較しても極めて高いのにもかかわらず、働いても苦しい母子家庭の実態が浮かび上がる。
日本の高齢者(65歳以上)の5人に1人は貧困。OECD加盟国で4番目の高さ。
労働者の現状も深刻。企業利益のうち、労働者の取り分を示す「労働分配率」が低下し、下層労働市場で働く労働者が増え続けている。組織化されず、再生産不可能な、生きているだけで精一杯の人々。
長時間過酷なブラック働き方の中、で精神疾患の患者が増え続けている。平成11年204万人だった患者数は平成26年には392万人に倍近くに増えている。
家から独立できず、結婚もできない若者たち。39歳以下の実家暮らしが47.6%に。生涯未婚率は男性の場合、1965年1.5%だったものが2015年にはなんと23.37%に、女性も2.53%から14.06%になっている。
男性は5人に1人が、女性は10人に1人が生涯結婚しない時代に。
8050問題と川崎殺傷事件の背景に何があるのか。個人を守ることが社会を守る事に。貧困は、自己責任ではなく社会構造の問題。
なぜ日本だけが「貧困は自己責任」なのか。徹底した福祉国家批判と自助を推進する自民党「研修厳暑8日本型福祉社会」で英国病とは何か、スウェーデン病に見る高福祉社会の弊害、理想社会の正体、危険な福祉万能思想など、徹底した福祉国家批判と自助を推進。「自助→共助→公助」論の押し付け。
日本の社会は世界の常識からみて異常な「自己責任」社会でボロボロだという共通認識が必要。経済成長しなければ幸せになれないモデルからの脱却が必要。
教育、医療、介護、保育、住宅などから順次市場の商品化と切りはなしていく政策へ。「賃金+社会保障給付」モデルへ切り替え。当たり前だと思わされている習慣や規範への抵抗運動の必要性(特に大学学費などは殆どの国では無償、給費制)
格差と貧困が拡がっている。資本金十億円以上の大企業は経常利益を大きく増やしているが、内部留保や株主への配当、役員報酬に流れ、賃金には回されない。大幅賃上げと、大企業、大資産家に適正課税を行い、社会保障、子育て教育に。声を上げ、運動すること。実体の可視化が必要だ。

(更新日:2019年06月02日)